私は、ふと、我に帰った。ぼんやりと瞼(まぶた)に今、自分のいる光景が映っていた。
私はぐっすり眠ってしまっていたようだった。今、自分はどこにいるのだろう?何をしていたのだろう?そう頭で考えようとしていた。ぼんやりと瞼に今、自分のいる光景が映っていた。コトンカタン♪とレールを走る音がする。走っている列車の中に私はいた。
あ~そうか、列車に乗って旅をしていたんだ…。でもどこへ出かけようとしていたのだろう…思い出せない。
今、どこにいるんだろう?列車は、日本の古い古い車両だった。それも私が幼い頃、昭和の時代に、何度も乗って、慣れ親しんだ日本のローカル線の車両の車内だ…。本当に懐かしい。(確かこれはキハ20という名前の車だったのではないだろうか…。)
他に乗っている乗客は見当たらない。私一人だけが、のんびりと揺れる車内にいた。
あれ?でも、よく考えると、もうこんな古い車両が、2020年の今も走っているはずはない…。もしイベントなら、他の乗客がいるはずだ…。
まだ私は夢を見ているのだろうか…?
車窓にはどこの海なのだろうか? 茫漠とした大海原が拡がっていた。
海なのか?湖なのかも分からない。渡り鳥たちが羽を休めている、穏やかな光景だった。
そして、ただ列車はひたすらに水平線を眺めつつ走り続けていた。
もしかしたら私は死んだのかもしれない…。ぼんやりとそう思い始めていた…。私の大好きだった昭和世代のローカル列車が、人生の最期という終着駅から先へ、私を天国へ連れて行ってくれるのかもしれない…。
そう思い、また瞼を閉じた。
列車は走り続けていた・・・。